デリダで読む『千夜一夜』
文学と範例性
「例」(example)のもつ両義的性質=範例性を切り口に「文学」の本質を解き明かしたデリダ。さらに,その理論を『千夜一夜』に適用して,世界文学として読み解く。「デリダがこんなにわかっていいのだろうか」と不安になる(?)気鋭の痛快力作。
◆デリダで読む『千夜一夜』 目次
序章
第一節 本書の目的と問題設定
第二節 先行研究と本書の位置づけ
第?部 ジャック・デリダにおける「範例性」の概念と「文学」
はじめに ?デリダの思想”と「文学」と「範例性」
第一章 「範例性」概念の展開
第一節 「例」の問題性
第二節 「模範的な」あり方の特権性と「法」
1 『弔鐘』――神という最良にして唯一無二の例
2 「パレルゴン」――判断の補助車としての「例」
3 「予断――法の前に」――特殊例と一般例の決定不可能性
第三節 特個性と普遍性の接合に向けて
1 『ユリシーズ グラモフォン』――過剰記憶と自己例証機能
2 「文学と呼ばれるこの奇妙な制度」――文学の「範例性」
第四節 「範例性」の構造
1 『パッション』――アポリアのメカニズムとしての「範例性」
2 『滞留』――生の原理としての「範例性」
第二章 「自己」の「範例性」
第一節 「無」の「究極例」の究極的な価値――『シニェポンジュ』
1 反=詩としてのポンジュ
2 「物」と特個性の力――外部へ向けて
3 「スポンジタオル」と「無」の例
4 「非=絶対」詩
第二節 「一」の反復可能性――『シボレート』
1 「日付」システムにおける「一」の強化と超脱
2 単数的かつ複数的な存在の可能性
3 出来事の「非=場」
4 自己への非=回帰
第三節 自己例証化の陥穽――『他の岬』における自己選別批判
1 岬=頂点と自己選別
2 〈範例主義的な〉論理
3 「特個性の詩学」?
第四節 特個的な自己をいかに語るか――『他者の一言語使用』
1 自己を語る困難――自分という例を前にして
2 自己の通約不可能性
3 デリダと西欧中心主義
第三章 虚構文学の「範例性」
第一節 「秘密の文学」――自他の反射的結合の場としての虚構文学
1 文学と「言おうとしない」こと
2 カフカ「父への手紙」にみる自律性と他律性の凝着――鏡像反射的同一化
3 赦しの懇請――自他の無限反射
4 文学における自律性と他律性の結合
5 不可能な系譜――文学におけるつながりなきつながり
第二節 「死を与える」――人間存在の「範例性」と「文学」
1 近現代社会における特個性の回復――出発点として
2 自己の特個性から、他者への開かれへ
3 他者の特個性から、普遍性への開かれへ
4 そのつど新たなやり直し
5 非主体性の場における主体性
第三節 虚構=文学の「範例性」――「タイプライターのリボン」まで
1 嘘と盗みの開く文学の可能性――初期アルトー論から『滞留』へ
2 偽証文学としてのルソーの「範例性」――「タイプライターのリボン」
3 出来事とマシンの両立
4 生の哲学としての「範例性」の思考
第?部のまとめ 「範例性」議論の位置づけとデリダの「文学」観
第?部 現代的テクストとしての『千夜一夜』――文学における「範例性」のモデルとして
はじめに 『千夜一夜』と文学研究
第四章 『千夜一夜』の生成過程と本質的可変性
第一節 作品の生成過程
1 「起源」の不在
2 反復される「完成」
第二節 編纂というテクスト生産活動
1 第二次の文学の場としての『千夜一夜』
2 印刷本の登場と(不可能な)正典化
3 収集編纂にみる反オリジナリティの原理
第三節 移動する作品
第五章 『千夜一夜』の越境性――離接的テクストとして
第一節 テクストの離接的構造
1 作品の「境界」の消失
2 入れ子構造と異世界への接続
3 教訓性の無効化
第二節 物語テクストのハイブリッド化
1 転調による物語展開
2 通時性のテクスト化と離接の構造
3 語る主体の範例化
第三節 ジャンルの越境
1 文化的位階の越境
2 口誦性と書記性の越境的な混淆
3 多元的喚起力――さまざまな芸術ジャンルへのアダプテーション
第六章 『千夜一夜』の汎=反復性――テクスト構成原理としての「範例性」
第一節 反復に対するこれまでの評価――否定的評価の伝統
第二節 表現の反復
1 夜の切れ目における反復――象徴的用法
2 ストック・デスクリプション――特個化と類例化
3 人物の反復
第三節 内容における反復
1 頻繁に使われるモチーフ
2 対の物語
3 パロディ的連関をなす小話群
4 『千夜一夜』の構成原理としての反復性
5 『千夜一夜』の外部との反復性
第七章 『千夜一夜』における範例的主体像――「非=知」と受動性
第一節 海のシンドバードにみる『千夜一夜』の主人公像
1 人喰い巨人の共通モチーフ
2 知のヒーローとしてのオデュッセウス
3 痴愚の代表シンドバード
第二節 『千夜一夜』における無能力者の系譜――その歴史的変化
1 古層の物語――寝取られ亭主たちの無力
2 増殖する無能な主人公たち
3 女性と知――無能主人公の脇役として
4 さまざまな民衆文学にみる主人公たち
第三節 非実体論的存在観――『千夜一夜』とイスラームの認識論
1 『千夜一夜』とイスラーム
2 イスラームにおける非連続的世界観
3 因果論の否定――ガザーリー
4 スーフィーズムにおける存在顕現の哲学
5 非実体論から肯定の思想へ
第?部のまとめ 『千夜一夜』と「範例性」
終章 デリダと『千夜一夜』
あとがき
註
資料
1 『千夜一夜』収録話タイトル一覧
2 『千夜一夜』生成過程略年表
文献一覧
事項索引
固有名詞索引
序章
第一節 本書の目的と問題設定
第二節 先行研究と本書の位置づけ
第?部 ジャック・デリダにおける「範例性」の概念と「文学」
はじめに ?デリダの思想”と「文学」と「範例性」
第一章 「範例性」概念の展開
第一節 「例」の問題性
第二節 「模範的な」あり方の特権性と「法」
1 『弔鐘』――神という最良にして唯一無二の例
2 「パレルゴン」――判断の補助車としての「例」
3 「予断――法の前に」――特殊例と一般例の決定不可能性
第三節 特個性と普遍性の接合に向けて
1 『ユリシーズ グラモフォン』――過剰記憶と自己例証機能
2 「文学と呼ばれるこの奇妙な制度」――文学の「範例性」
第四節 「範例性」の構造
1 『パッション』――アポリアのメカニズムとしての「範例性」
2 『滞留』――生の原理としての「範例性」
第二章 「自己」の「範例性」
第一節 「無」の「究極例」の究極的な価値――『シニェポンジュ』
1 反=詩としてのポンジュ
2 「物」と特個性の力――外部へ向けて
3 「スポンジタオル」と「無」の例
4 「非=絶対」詩
第二節 「一」の反復可能性――『シボレート』
1 「日付」システムにおける「一」の強化と超脱
2 単数的かつ複数的な存在の可能性
3 出来事の「非=場」
4 自己への非=回帰
第三節 自己例証化の陥穽――『他の岬』における自己選別批判
1 岬=頂点と自己選別
2 〈範例主義的な〉論理
3 「特個性の詩学」?
第四節 特個的な自己をいかに語るか――『他者の一言語使用』
1 自己を語る困難――自分という例を前にして
2 自己の通約不可能性
3 デリダと西欧中心主義
第三章 虚構文学の「範例性」
第一節 「秘密の文学」――自他の反射的結合の場としての虚構文学
1 文学と「言おうとしない」こと
2 カフカ「父への手紙」にみる自律性と他律性の凝着――鏡像反射的同一化
3 赦しの懇請――自他の無限反射
4 文学における自律性と他律性の結合
5 不可能な系譜――文学におけるつながりなきつながり
第二節 「死を与える」――人間存在の「範例性」と「文学」
1 近現代社会における特個性の回復――出発点として
2 自己の特個性から、他者への開かれへ
3 他者の特個性から、普遍性への開かれへ
4 そのつど新たなやり直し
5 非主体性の場における主体性
第三節 虚構=文学の「範例性」――「タイプライターのリボン」まで
1 嘘と盗みの開く文学の可能性――初期アルトー論から『滞留』へ
2 偽証文学としてのルソーの「範例性」――「タイプライターのリボン」
3 出来事とマシンの両立
4 生の哲学としての「範例性」の思考
第?部のまとめ 「範例性」議論の位置づけとデリダの「文学」観
第?部 現代的テクストとしての『千夜一夜』――文学における「範例性」のモデルとして
はじめに 『千夜一夜』と文学研究
第四章 『千夜一夜』の生成過程と本質的可変性
第一節 作品の生成過程
1 「起源」の不在
2 反復される「完成」
第二節 編纂というテクスト生産活動
1 第二次の文学の場としての『千夜一夜』
2 印刷本の登場と(不可能な)正典化
3 収集編纂にみる反オリジナリティの原理
第三節 移動する作品
第五章 『千夜一夜』の越境性――離接的テクストとして
第一節 テクストの離接的構造
1 作品の「境界」の消失
2 入れ子構造と異世界への接続
3 教訓性の無効化
第二節 物語テクストのハイブリッド化
1 転調による物語展開
2 通時性のテクスト化と離接の構造
3 語る主体の範例化
第三節 ジャンルの越境
1 文化的位階の越境
2 口誦性と書記性の越境的な混淆
3 多元的喚起力――さまざまな芸術ジャンルへのアダプテーション
第六章 『千夜一夜』の汎=反復性――テクスト構成原理としての「範例性」
第一節 反復に対するこれまでの評価――否定的評価の伝統
第二節 表現の反復
1 夜の切れ目における反復――象徴的用法
2 ストック・デスクリプション――特個化と類例化
3 人物の反復
第三節 内容における反復
1 頻繁に使われるモチーフ
2 対の物語
3 パロディ的連関をなす小話群
4 『千夜一夜』の構成原理としての反復性
5 『千夜一夜』の外部との反復性
第七章 『千夜一夜』における範例的主体像――「非=知」と受動性
第一節 海のシンドバードにみる『千夜一夜』の主人公像
1 人喰い巨人の共通モチーフ
2 知のヒーローとしてのオデュッセウス
3 痴愚の代表シンドバード
第二節 『千夜一夜』における無能力者の系譜――その歴史的変化
1 古層の物語――寝取られ亭主たちの無力
2 増殖する無能な主人公たち
3 女性と知――無能主人公の脇役として
4 さまざまな民衆文学にみる主人公たち
第三節 非実体論的存在観――『千夜一夜』とイスラームの認識論
1 『千夜一夜』とイスラーム
2 イスラームにおける非連続的世界観
3 因果論の否定――ガザーリー
4 スーフィーズムにおける存在顕現の哲学
5 非実体論から肯定の思想へ
第?部のまとめ 『千夜一夜』と「範例性」
終章 デリダと『千夜一夜』
あとがき
註
資料
1 『千夜一夜』収録話タイトル一覧
2 『千夜一夜』生成過程略年表
文献一覧
事項索引
固有名詞索引