煩悶青年と女学生の文学誌
「西洋」を読み替えて
かつて学生のあいだに「煩悶」が大流行した。明治後半である。そのころ,高等教育を受けた「女学生」,そして「女学生神話」も誕生した。これら特権的若者の実態を,その「新しさ」のモデルとなった「西洋」と往還しつつ,当時の文学・メディアのなかに探る。
煩悶青年と女学生の文学誌――目次
はじめに
第一章 明治の「煩悶青年」たち
一 「煩悶青年」とは何か
煩悶の萌芽
「巌頭之感」の衝撃
煩悶の流行と変質
二 文学のなかの煩悶青年たち
ロシア経由の無為 ― 文三から欽哉へ
煩悶できる身分
「恋」という煩悶
三 明治末の『ヨーン・ガブリエル・ボルクマン』
「煩悶青年」の物語としての『ヨーン・ガブリエル・ボルクマン』
自由劇場試演とその反響
鴎外のテクスト
第二章 「女学生」の憂鬱
一 「女学生」というメタファー
開かれた少女たち ― 明治の新教育
『薮の鶯』の少女たち
「恋愛」する女学生
二 「恋愛」の波及
『女学雑誌』の役割
「恋愛」の翻訳
翻訳の功罪
三 「女学生神話」の確立
ファンタスムの誕生 ―「新聞小説」と女学生
「神話」の確立
「知性」と「堕落」―『魔風恋風』と囲い込まれる女学生
第三章 「堕落女学生」から「宿命の女」へ
一 「堕落女学生」の行方
引き裂かれる頭と身体
「悪女」の可能性
新しい二極化 ―『青春』の女たち
二 明治東京の「宿命の女」
翻訳のなかの「宿命の女」 ―『みをつくし』とダンヌンツィオ
エキゾティックな強者
クレオパトラと「新式の男 」―『虞美人草』をめぐって
第四章 「新しい男」の探求 ― ダンヌンツィオを目指して
一 『煤煙』という出発点
「塩原事件」と『死の勝利』― 明治日本のダンヌンツィオ
「宿命の女」の造形 ―『煤煙』の女性像
「新しい男」の出現
二 漱石と・Oの青年像 ―「新しい男」とは何か
塩原事件と『三四郎』
漱石の「新しい男」 ― 長井代助
『青年』における「新しい男」と女性たち、そしてその後継者
三 「醜い日本人」をめぐって ― ダンヌンツィオと高村光太郎を結ぶ糸
ダンヌンツィオのジャポニスム ― サクミの登場
ロティの影 ―『快楽』のサクミとその翻訳
日本人の手になる「醜い日本人」 ― 高村光太郎の「根付の国」
第五章 女たちの物語
一 「令夫人」から「妖婦」へ ― 大塚楠緒子の作品をめぐって
「令夫人」からの発信 ―『晴小袖』と『露』
ロマンティック・ラブ・イデオロギーの解体と再構築
明治の「パオロとフランチェスカ」ブーム
二 遅れてきた女学生小説 ―『あきらめ』の意義
女をめぐる言説
遊歩者としての女学生 ― モデルニテの獲得
同性愛的世界
三 女たちの新たなる地平 ―『青鞜』に集う物語
『青鞜』創刊号のフィクション ―「生血」と「陽神の戯れ」
フラッパーとブッチ
「真の恋」の希求
おわりに
注
あとがき
事項索引
人名・著作・雑誌索引
装幀 ― 難波園子
はじめに
第一章 明治の「煩悶青年」たち
一 「煩悶青年」とは何か
煩悶の萌芽
「巌頭之感」の衝撃
煩悶の流行と変質
二 文学のなかの煩悶青年たち
ロシア経由の無為 ― 文三から欽哉へ
煩悶できる身分
「恋」という煩悶
三 明治末の『ヨーン・ガブリエル・ボルクマン』
「煩悶青年」の物語としての『ヨーン・ガブリエル・ボルクマン』
自由劇場試演とその反響
鴎外のテクスト
第二章 「女学生」の憂鬱
一 「女学生」というメタファー
開かれた少女たち ― 明治の新教育
『薮の鶯』の少女たち
「恋愛」する女学生
二 「恋愛」の波及
『女学雑誌』の役割
「恋愛」の翻訳
翻訳の功罪
三 「女学生神話」の確立
ファンタスムの誕生 ―「新聞小説」と女学生
「神話」の確立
「知性」と「堕落」―『魔風恋風』と囲い込まれる女学生
第三章 「堕落女学生」から「宿命の女」へ
一 「堕落女学生」の行方
引き裂かれる頭と身体
「悪女」の可能性
新しい二極化 ―『青春』の女たち
二 明治東京の「宿命の女」
翻訳のなかの「宿命の女」 ―『みをつくし』とダンヌンツィオ
エキゾティックな強者
クレオパトラと「新式の男 」―『虞美人草』をめぐって
第四章 「新しい男」の探求 ― ダンヌンツィオを目指して
一 『煤煙』という出発点
「塩原事件」と『死の勝利』― 明治日本のダンヌンツィオ
「宿命の女」の造形 ―『煤煙』の女性像
「新しい男」の出現
二 漱石と・Oの青年像 ―「新しい男」とは何か
塩原事件と『三四郎』
漱石の「新しい男」 ― 長井代助
『青年』における「新しい男」と女性たち、そしてその後継者
三 「醜い日本人」をめぐって ― ダンヌンツィオと高村光太郎を結ぶ糸
ダンヌンツィオのジャポニスム ― サクミの登場
ロティの影 ―『快楽』のサクミとその翻訳
日本人の手になる「醜い日本人」 ― 高村光太郎の「根付の国」
第五章 女たちの物語
一 「令夫人」から「妖婦」へ ― 大塚楠緒子の作品をめぐって
「令夫人」からの発信 ―『晴小袖』と『露』
ロマンティック・ラブ・イデオロギーの解体と再構築
明治の「パオロとフランチェスカ」ブーム
二 遅れてきた女学生小説 ―『あきらめ』の意義
女をめぐる言説
遊歩者としての女学生 ― モデルニテの獲得
同性愛的世界
三 女たちの新たなる地平 ―『青鞜』に集う物語
『青鞜』創刊号のフィクション ―「生血」と「陽神の戯れ」
フラッパーとブッチ
「真の恋」の希求
おわりに
注
あとがき
事項索引
人名・著作・雑誌索引
装幀 ― 難波園子