「見る」と「書く」との出会い

フィールド観察学入門

「見る」と「書く」との出会い
著者 麻生 武
ジャンル 心理学・認知科学・臨床 > 概論・研究法
出版年月日 2009/09/10
ISBN 9784788511767
判型・ページ数 4-6・304ページ
定価 本体2,800円+税
在庫 在庫あり

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フィールドでの観察は実に奥が深く難しい。それを他者と共有できるよう書くのはさらに難しい。科学的観察と現象的観察の違い,観察と記憶の関係という観察の基本問題に立ち返りつつ「“見た”ことを“書く”」とはどういうことかを事例をあげて具体的に考察。
目次
まえがき

第I章 観察とは何か
(1)「観察」する東西2つの精神
諸法実相の枠組み
ロゴスの枠組み
ギリシア人の発見した自然
観察と記述の科学
(2)日本人による観察
観察と逸話記録
アリストテレスと清少納言
観察と写生
(3)自分の観察したことと他者が観察したこと
アリストテレス的立場における観察の普遍性
種ではなく個物を見る観察
ファーブルと熊田千佳慕
「科学的観察」と「現象的観察」
自分の観察したことが、はたして他者に伝わるのか

第II章 観察と視点
(1)観察している自分がどのように表現されているか
マッハの自画像
目に映る「自己」と「他者」の非対称性
?個体の知覚?と?共同化された知覚?
ゼミの風景をマッハ的に描く
(2)大学の学務課を文章で表現する
「学務課はどんなところか?」の問いに自己の体験で応える
自己の「具体的体験の報告」と「一般化した報告」
「地に足をつけた身体」による報告と「浮き上がった身体」による報告
(3)大学の学務課をスケッチで表現する
「地に足をつけた身体」からの見え
活動している自己を見つめるまなざし
「しだいに浮き上がる身体」からの見え
「浮き上がった身体」からの見え
(4)文章表現と絵画表現、それぞれの視点のあり方を比較する
文章表現への「空間性」の取り入れ
絵画表現への「時間性」の取り入れ

第III章 観察とその対象(モノや空間)
(1)何を観察するのか
?見る?ことと?伝える?こと
路上観察学から学ぶ
身のまわりの観察から
(2)空間の描写
   ― 大学までの通学路をどのように文章で表現するのか
描き出す対象の選択、主観的なコメント、論評的なコメント
目の前に展開していく知覚風景を描き出す力
体験としての通り(街)の参与観察
(3)観察の多様性、記述の多様性
観察と記述の不可能性
「私」というフィルター
「公共性」というフィルター

第IV章 コミュニケートしている人々の観察
(1)電車の中の会話の観察
幼稚園の女の子と家族
中学生の仲間関係
恋する男子高校生
(2)街の中でコミュニケーションを観察する
スターバックスの3人組
横断歩道の小学生と母
デパートの中、母娘の追跡

第V章 目の前で生成する子どもたちの遊びの観察
(1)中高生たちの幼稚園観察
参与観察というより参加体験
体験記録から観察記録へ
砂場遊びの参与観察の記録
中高生の観察文の特徴
(2)大学1年生の幼稚園観察
特定の子どもの追跡観察
子どもたちの仲間遊びの観察
大勢の子どもたちの動きの激しい場面の観察

第VI章 観察記録文(フィールドノーツ)は何を記録しているのか
(1)出来事と観察者との関係
私と院生UCさんとの観察記録のズレ
ズレの2つのタイプ ―「言及の有無」と「言及の矛盾」
(2)羅生門問題、観察記録の不完全性
「観察」の主観性
ビデオの利用によって「羅生門問題」は回避できるのか
ビデオの映像を文章化する困難
(3)フィールドに立つことの意味
観察者の身体性と観察された事象
ビデオによる観察と裸眼による観察
過去の録画ビデオの視聴と記憶の問題

第VII章 観察とエピソード記憶
(1)観察したことを想起して記録する
エピソード記憶とは何か
新しいエピソード記憶の捉え方
観察したことを記憶しておく大変さ
個性的観察としての「現象的観察」
(2)過去の体験を想起する、再構成する
タイムトラベルする自己
過去を記憶しているのか、過去を知っているのか
自分がそれを体験したのだという主観的な感覚の保持
エピソード記憶とさまざまな自己投影
自分のフィールドノーツを読む

終 章 自分のための「フィールドノーツ」から他者に向けた「文章」へ
(1)日本における「学」の土台としての「現象的観察」
(2)「現象的観察」における3つのステップ
フィールドの選択、フィールドにおける観察
フィールドノーツにどのように記録するのか
フィールドノーツを読み返し、思索し、リライトする
(3)フィールドノーツから、思考を介して、他者への表現へ
鯨岡のエピソード観察論のエッセンス
本書の観察論と鯨岡の観察論の相違点
(4)まとめ ― 過去と未来とをつなぐために

引用文献  (9)
事項索引  (3)
人名索引  (1)

  装幀=虎尾 隆

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